静岡といえば富士山とお茶

【144,400トン】
「さて、この数字は一体なんでしょう」

なんてちょっとクイズじみた問いかけをしてみたい。ピンと来た方もいるのではないかと思うけれど、これは平成27年における静岡県内での茶葉生産量である。
これは、みなさんご存知の通り全国ナンバーワンの数字。そこから第2位の鹿児島県が約11万トン、第3位の三重県が約3万トンと続き、全国合わせるとだいたい35万トン強が昨年1年のうちに生産されたのだそうだ。(ちなみに宇治茶の有名な京都は約1.4万トンで第5位)
つまり、日本全国の茶葉のうち4割ほどが静岡県内で生産されていることになる。

と、こんなデータは、静岡のひとにとっては「何を今更」と当たり前のことかもしれない。
でもその「当たり前」という感覚って、すごいことなんじゃないだろうか。

静岡へやってきて、少し経った頃の話である。
夏も近づく八十八夜にはきっと、年若いお茶摘み娘さんたちが青々とした富士山をバックにせっせとお茶の葉を摘んでいるに違いない、と典型的な静岡像を抱いていたわたしは、
「折角静岡に来たからには、お茶摘みがしてみたい!」
と意気込んで求人情報誌を眺めていた(苺娘のように、お茶摘み娘のバイトもあると思っていたのだ)ところ、大学の同期が呆れたような顔をしてこう言った。
「そんなに茶摘みがしたいなら、うちの畑に来れば」
しかも、ひとりやふたりではない。県内の様々なところに茶畑を持つ同級生たちが、労働力を求めて口々に「うちもうちも」とやるのである。

「少なくともクラスに一人はお茶農家の子がいる」とも言われる静岡で生まれ育ったひとにとっては、大して珍しい光景ではないのかもしれない。けれど、わたしのように外からやって来た人間にとっては、平たく言って、この状況はちょっと普通ではない。
これが他県で、その県の生産量全国一作物だったら……。例として、わたしの生まれ育った福島県と生産量が全国1位作物の桃で考えてみる。
「折角福島に来たからには、桃をもいでみたい」
と思うだろうか。おそらく思うまい。
更に、そこいら中から桃農家が湧いて出てきたりもしないのだ。

古くは江戸時代、将軍家へ奉じる御用茶の産地であったという静岡。今や「生産量ナンバーワン」となり、「静岡といえば富士山とお茶」という外からのイメージも強い。
けれどそれ以上に、静岡のひとたちにとってお茶は、「当たり前」にそこにあるものなのだ。静岡に来てしばらくの年月が経ち、わたし自身が静岡に馴染んできた(と思っている)今だからこそ実感する。
静岡のお茶がナンバーワンなのは、生産量だけではないのだと。ひとびとの生活にすっかり溶け込み、当然のようにいつもそこにあること、静岡のひとたちとお茶が今まで共に暮らしてきたときの流れのことなのだと。

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