キャバクラオーナーの経営学

静岡は飲食店の入れ替わりが激しい地域だと耳にすることが度々あります。
そもそも飲食がそういった傾向の強い業界ではありますが、静岡だと特に顕著だそうで、新しい店を出して・畳んでというサイクルが他県よりも速いのだとか。

「いつかは自分のお店を持ちたい」
というのは、飲食店で働くスタッフの多くが抱いている野望ではないかと思います。
十分に修行し、開業資金を用意して、ようやく夢だった自分のお店を開店、一躍繁盛店へ……というサクセスストーリーを描きたいものですが、実際にはいざやってみてもうまくいかないケースの方が多いのです。

理由として考えられるのが、まず「家賃が高い」という点。
静岡の地価は、なんと横浜と同じ。
南北を海と山に挟まれた静岡は、土地全体の面積に対して店舗を構えられる立地が少ないこともあって、地方都市としては家賃相場が高いのです。一見人の入りがよく繁盛しているように見える飲食店でも、高い家賃のために利益はほとんどないというパターンです。

とはいえ家賃が高くて大変というのは、新規出店に限らず周囲の店舗全てにも言えるでしょう。
飲食店を閉店に追い込む一番の理由は、オーナーの視点が経営者になりきれていない、ということです。
スタッフとして働く中で身につくのは、調理や接客、場合によっては仕入れや会計などの店を営業するための技術で、どちらかと言えば職人的な分野です。経営者として店を運営するためのノウハウを学べる修行先はそうそうありませんよね。

長年修行して調理の腕を上げたのだから、やはり自分の店のお客さんに最大限美味しいものを味わってもらいたいというのが料理人としての心情ではないでしょうか。より良いものを、となると素材選びや調理にかける手間やお金も大きくなり、利益を考えると高い値段で店に出さざるを得ないですよね。
良いものに高い値段を払う、というのは至極当然です。
ですが、それがお客さんのニーズに即しているかというとまた別の問題となってきます。

静岡のお客さんの多くは、「安くて割と美味しいものを食べたい」と考えています。
これは地域に限らず当たり前の欲求ではありますが、静岡の場合、東京などの大都市圏へのアクセスが容易なため「高くて本当に美味しいもの」を食べたい特別な日には東京などの都会へ行ってしまいます。
となると、静岡にある「高くて良いもの」の需要というのは想像以上に小さいということになりますね。
上記の例のように、お客さんのニーズを計りそこねたために夢の独立開業が手痛い失敗につながってしまうケースが多いのです。

さて一方で、飲食店を新規開店して長続きさせているパターンももちろんあります。
成功している飲食店には、味とコストパフォーマンスが両立していたり、立地が非常に優れていたり、話題性のある目玉メニューがあったり、SNSに映える内装だったりと様々な要素が絡んでいるものですが、注目したいのが異業種からの参入、特にキャバクラのオーナーが飲食店に手を出したという場合です。
キャバクラのオーナーは、飲食店で修行したスタッフと同じくらい、飲食店をやりたいと思っている人が多いと言われています。

キャバクラのお客さんたちは、ただただお酒と時間にお金を払っているわけではありません。その時間で得られる満足感に料金を支払っています。楽しくない時間を過ごしたお店にリピートしようとは思わないですよね。
商品が「時間」という目に見えないものですから、形のあるものを売る販売や飲食よりも、キャバクラはよりシビアだと言えるかもしれません。
そのため、キャバクラのオーナーは 価格設定やメニューリストの考案、どういったキャストを雇うべきかなど、お客さんのニーズに敏感でなければ務まりません。

そのためか、キャバクラのオーナーが始めた飲食店は、職人気質な料理人がオーナーのお店よりも味の点で一歩劣る場合があるかもしれませんが、顧客に対して柔軟に対応しているように見えます。
キャバクラのオーナーが開業した飲食店の方が息が長い、というパターンの裏には、こうした理由が存在しているのです

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